イメチェンのためのかつら

私がまだ19歳頃だったか、両親と一緒にデパートに買い物に行ったのですが、そのデパートの一角に、かつらを売っているコーナーがあって、私は好奇心に促されて、そのかつらコーナーに行きました。
そうして、店員さんが「かぶってみませんか?」と言われて、両親にかぶってみてもいいかどうかを聞きましたら、いいよ、という返事でしたので、さっそく鏡の前に座って、かぶってみたいかつらを指差しました。
その頃の私のヘアースタイルはショートヘアで、レイヤーがかかっている形だったので、肩までのボブスタイルのかつらをかぶってみたいと思ったのです。
お店の人は丁寧に私の髪にネットをかぶせてから、そのボブスタイルのかつらをかぶらせてくれました。
そうしたら、それが案外似合って、私はそれが欲しくなりました。
私は母にねだると、母は笑いながらそれを買ってくれました。
私が人生で初めて買ったかつらです。
そして、それから、私は家の中で、そのかつらをかぶって、鏡の前に立って、楽しんでいました。
まだ、それを身につけて外出する勇気はありませんでした。
ショートヘアからストレートのボブスタイルへの変身は、もの凄く違った感じになるのでした。
うちの祖母がよく言っていました。「女は髪形」と。それは、どんな女性も髪形ひとつで美しくもなれば醜くもなるという言葉でした。私は鏡の中のボブスタイルの自分の髪の毛を見て、洋服も着替えたりして、ファッションショーをして一人で楽しんでいました。
そんな時、父が私のかつらをかぶってみたい、と言い始めました。
父は面白いことが大好きなのです。
それで、禿げかけた父の頭に、私のボブスタイルのかつらをかぶせてみました。
家族は大笑いになりました。
父はすっかりそのスタイルが気に入ってしまって、母のワンピースを着ると言い出しました。
そこで、母が太めに出来ているワンピースを持ってきて父に着せたのです。
その姿はもの凄くおかしくて、私はその姿をポラロイドの写真で撮ることにしました。
ちょっと口紅を塗って、ソファーに座ってにっこり笑った父の姿がそこにありました。
そして、ポラロイドの写真を父に見せたら「なかなか美人だ」とまんざらではありませんでした。
そして、兄の友達が来た時に、母が「紹介したい人がいるんだけど見てみる?」と言って、もの凄く期待した兄の友達にその父のポラロイドの写真を見せて、大ウケにウケていました。
我が家のかつらをつかった楽しみ方の一つでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*